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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(1) 第1 公序良俗 第2 意思能力

30・8・12

(1)で取り上げる範囲

第1 公序良俗
第2 意思能力

第1 公序良俗(民法第90条関係)

旧民法第90条の規律を次のように改める。
「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とする。」 (90条)
(解説)

旧民法90条は,「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は,無効とする。」と規定していました。改正民法では,「事項を目的とする」の文言を削除しました。

「事項を目的とする」との文言では,公序良俗に反するかどうかを,法律行為の内容のみで判断するように読めてしまいますが,従前からの判例は,法律行為が行われた過程その他の諸事情を考慮しており,そのことを条文上も明確にするため,「事項を目的とする」の文言を削除したものです。

第2 意思能力

意思能力について,次のような規律を設ける。
「3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは,その法律行為は,無効とする。」 (第2章第2節意思能力 3条の2)
(解説)

たとえば2歳の幼児は,お菓子が食べたいという意思(気持ち)は表明できても,お菓子を菓子店から購入する売買契約を締結するという,意思表示(売買契約)まではできません。このように,有効に意思表示をする能力のことを意思能力といいます。子供の場合は,6〜7歳くらいからその能力が備わるようになってくると言われています。
このような意思能力のないものの法律行為は,判例(大判明治38年5月11日判決),学説とも,条文にはないけれども,民法の意思自治の原則から考えて,当然に無効だとされてきました。
本条は,上記のような当然のことと言われていたことを,明文化したものです。
なお,意思能力の具体的な意義については,学説上,意思能力を事理弁識能力であると解して個別具体的な法律行為の内容にかかわらず一律にその存否が判断されるとする考え方と,個別具体的な法律行為の内容に即してその存否が判断されるとする考え方とが対立していましたが,改正法は特にその点に関する規定を設けておらず,引き続き解釈に委ねられています。
また,意思無能力を理由とする無効は,意思能力を有しない側からしか主張できないものとする従前からの解釈は,引き続き維持されると解されています(一問一答「民法(債権関係)改正」13〜14頁,以下「一問一答」と略します)。

以上