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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(6) 第8 債権の目的 第9 法定利率

第9 法定利率

1 変動制による法定利率
民法第404条の規律を次のように改める。

404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

   2 法定利率は,年3パーセントとする。

   3 前項の規定にかかわらず,法定利率は,法務省令で定めるところにより,3年を一期とし,一期ごとに,(4)の規定により変動するものとする。

   4 各期における法定利率は,この(4)により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この(4) において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(当該割合に1パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)を直近変動における法定利率に加算し,又は減算した割合とする。

   5 前項に規定する基準割合とは,法務省令で定めるところにより,各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月まで各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(当該割合に0.1パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
(解説)

旧民法は,一般民事の法定利率を年5パーセントとし,商法514条では,商事の法定利率を年6パーセントとしています。
しかし,低金利時代を迎え,従前の法定利率は,経済情勢と大きく乖離していることから,その利率が見直されるとともに,変動利率制に移行することになりました。
そこで,1項では,利息について別段の定めがないときには,利率は,当該利息が生じた最初の時点における法定利率によることとしました。「利息が生じた最初の時点」については,原則として利息はその貸付金を借主が受け取った日以降に発生するので(新589条2項),金銭交付の時点と見るべきであると考えられます(一問一答86頁(注1)参照)。
また,利息の発生する債権について適用される法定利率は,最初に発生した利息に適用された利率が,その後に発生した利息にも引き続き適用されます。
また,2項で,改正民法施行当初の利率は,3パーセントとされています。
次に,3項では,法務省令により,3年ごとの見直しがなされます。
さらに,4項では,過去5年間の平均利率をもとにして,5項で求められた基準割合と直近変動期の基準割合の差が1パーセントを超える場合には,小数点以下を切り捨てた上で,直近変動期の法定利率に加算もしくは減算することとしました。
5項は,基準割合の計算方法を定めています。
なお,この改正法の施行により,商法514条の規定は廃止されます。

2 金銭債務の損害賠償額の算定に関する特則 (民法第419条第1項関係)
民法第419条第1項の規律を次のように改める。

419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし,約定利率が法定利率を超えるときは,約定利率による。
(解説)

改正法では,利率が,固定制から変動制に移行するため,金銭債務の不履行による損害賠償請求につき,いつの時期の法定利率によるかを定める必要があり,改正法は,「当該債務につき債務者が遅滞の責任を負ったとき」の法定利率によることとしました。

3 中間利息控除
中間利息控除について,次のような規律を設ける。

417条の2 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において,その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは,損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により,これをする。
     2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において,その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも,前項と同様とする。
(解説)

旧法下の判例は,不法行為による損害賠償請求における中間利息控除には法定利率を用いなければならないとしていましたが,新法において,法定利率におけるゆるやかな変動制を採用したため,中間利息の控除につき,いつの時点での法定利率を用いるかの問題が生じました。
この点につき,改正法は,損害賠償請求権の,いわゆる中間利息控除につき,その法定利率を決める基準時を,損害賠償の請求権が発生した時点としました。
その結果,不法行為に基づく損害賠償請求では,(後遺症に基づく損害も含めて・一問一答89頁参照。)不法行為時になり,安全配慮義務違反による損害賠償請求では,義務違反の時点の法定利率によることとなります。

以上