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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(7) 第10 履行請求権等 第11 債務不履行による損害賠償

5 代償請求権
代償請求権について,次のような規律を設ける。

422条の2 債務者が,その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは,債権者は,その受けた損害の額の限度において,債務者に対し,その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。
(解説)

旧民法に代償請求権に関する特段の規定はなかったが,判例(最判昭和41年12月23日)は,債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務者がその債務の目的物との代償である権利又は利益を取得した場合に,債権者がその権利の移転又は利益の償還を債務者に対して求めることができるという権利(代償請求権)を認めていました。そこで,改正法でも,代償請求権に関する規定を新設しました。

6 損害賠償の範囲4(民法第416条関係)
旧民法第416条の規律を次のように改める。

416条1項 債務の不履行に対する損害賠償の請求は,これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。(旧民法第416条第1項と同文)
     2 特別の事情によって生じた損害であっても,当事者がその事情を予見すべきであったときは,債権者は,その賠償を請求することができる。
(解説)

旧民法416条1項はそのままとし,2項についても,「予見し,又は予見することができたとき」の文言を,「予見すべきであったときは」と改めました。
旧法での裁判実務は,当事者が特別の事情を実際に予見していたといった事実の有無によるのではなく,当事者がその事情を予見すべきであったといえるか否かという規範的な評価により,特別の事情によって生じた損害が賠償に含まれるかが判断されていました。新法でも,このような解釈を条文上も明確にするため,特別の事情について,「予見すべきであったとき」に改めています(一問一答77頁)。
このように,予見すべきであったと規定することにより,それが規範的な評価を含むものであることを明確にしたのです。

7 過失相殺(民法第418条関係)
旧民法第418条の規律を次のように改める。


418条 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の責任及びその額を定める。
(解説)

旧民法の民法418条の条項に「又はこれによる損害の発生若しくは拡大」という文言が加わっています。旧法の解釈としても,「不履行に関して」とは,不履行の発生に関する過失のみならず,損害の発生・拡大に関して過失がある場合を含むものとされており,このような一般的な解釈を明文化したものです。

8 賠償額の予定(民法第420条第1項関係)
旧民法第420条第1項後段の「この場合において,裁判所は,その額を増減することができない。」との規定を削除する。
(解説)

旧民法420条1項後段の「(損害賠償額の予定につき)裁判所はその額を増減することができない。」旨の規定を削除するものです。
損害賠償額の予定があまりにも大きく,あるいはあまりにも小さい場合に,公序良俗違反で無効となると考えられます。この条項が,そのような解釈の妨げになるおそれもあるので,削除することにしたものです。
それが削除されたからといって,裁判所が予定額を増減できるようになった,というわけではありません。

以上