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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(8) 第12 契約の解除 第13 危険負担

第13 危険負担

1 危険負担に関する規定の削除(民法第534条・第535条関係)
民法第534条及び第535条を削除する。
(解説)

民法534条は,特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合に,その物が債務者の責に帰することができない事由によって滅失し,又は損傷した場合に,その滅失又は損傷は,債権者の負担に帰することが定められていました。
しかし,その結論は,双務契約の対価関係からして,公平を欠くと批判され,さまざまな制限解釈がなされていました。
今回の改正では,民法534条及びその特則ともいえる同法535条を削除することとしました。
但し,履行不能による契約解除に債務者の帰責事由が不要ですので,債権者としては,自らの履行義務を免れるためには,契約解除が必要となりました。
現行法のように,危険負担によって債務が当然に消滅することにならないので,自らの債務を免れるには,契約解除が必要なのです。

2 反対給付の履行拒絶(民法第536条関係)
民法第536条の規律を次のように改めるものとする。

536条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができる。
   2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができない。この場合において,債務者は,自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,これを債権者に償還しなければならない。
(解説)

改正法は,危険負担の制度を大きく変更しました。従来の危険負担の制度は,債務者の責に帰することができない事由によって履行不能になった場合に,反対債務が消滅するか存続するか,という観点から規定がなされていました。
ところが,改正法の危険負担の制度は,特定物の設定又は移転に関する534条と535条を削除した上で,536条の債務者主義に関する条項も,「反対給付の履行を拒むことができる」という,履行拒絶の効力が生じると規定し,従来の,当然消滅の効力が生ずる制度を改めたのです。
その結果,不当解雇による就労拒否など,債権者である使用者の責に帰すべき事由によって就労が出来なかった場合に,改正法の規定によれば,使用者は「反対給付を拒むことができない。」とはなっているものの,請求権の発生を規定していません。そこで,この条項から直ちに賃金支払い請求権が発生するか否かが問題となりますが,立法担当者は請求権を肯定する見解のようです(一問一答229頁)。履行拒絶構成に変更する以上,中間試案のように,明文で請求権を規定すべきであったと思われます。

以上