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民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(13) 第18 保証債務

30・8・15

本項が取り上げる範囲

第18 保証債務

第18 保証債務

1 保証債務の付従性(民法第448条関係)
旧民法第448条の規律を次のように改める。

448条 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは,これを主たる債務の限度に減縮する。(民法第448条と同文)
   2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても,保証人の負担は加重されない。
(解説)

1 1項は,民法448条と同じ規定です。
2 2項は,主たる債務の内容が,保証契約締結後に,従来より加重された場合でも,保証債務に影響を及ぼさない,という当然の解釈を明文で明らかにしたものです。反対に,主たる債務が軽減される場合には,保証人に不利益を強いるものではないので,付従性から,保証債務もそれに応じて変更されます。

2 主たる債務者の有する抗弁等
(1) 主たる債務者の有する抗弁
保証人が主たる債務者の有する抗弁をもって対抗することの可否について,次のような規律を設ける。

457条2項 保証人は,主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。

(解説)

旧民法457条2項は,保証人が,主債務者の有する反対債権による相殺をもって債権者に対抗する旨を規定していましたが,相殺以外の主債務者が有する抗弁に関しては,明文規定がありませんでした。
しかし,従来から学説・判例(最判昭和40年9月21日)によって,保証債務の付従性を理由に,保証人は,主たる債務者が有する抗弁を対抗できると考えてきており,それを明文化したものです。

(2) 主たる債務者の有する相殺権,取消権又は解除権
旧民法第457条第2項の規律を次のように改める。

457条3項 主たる債務者が債権者に対して相殺権,取消権又は解除権を有するときは,これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れる限度において,保証人は,債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(解説)

たとえば,主たる債務者が有する反対債権につき,保証人が相殺権を行使できるのではなく,保証人に,それを理由に履行を拒絶する権利を与えるにすぎないことを明確にしたものです(履行拒絶の坑弁)。取消権・解除権についても同じです。従来もそのように解釈されていました。

3 保証人の求償権
(1) 委託を受けた保証人の求償権(民法第459条関係)
旧民法第459条の規律を次のように改める。

459条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは,その保証人は,主たる債務者に対し,そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては,その消滅した額)の求償権を有する。
    2 民法第442条第2項の規定は,前項の場合について準用する。(民法第459条第2項と同文)



459条の2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは,その保証人は,主たる債務者に対し,主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。この場合において,主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは,保証人は,債権者に対し,その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
     2 前項の規定による求償は,主たる債務の弁済期以後の法定利息及びその弁済期以後の債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
     3 第1項の求償権は,主たる債務の弁済期以後でなければ,これを行使することができない。

(解説)

459条は,委託を受けた保証人が求償できる場合の規定です。求償額について,保証人が支出した財産の額と主債務が消滅した額が一致しない場合に,どこまで求償できるかを,カッコ書きは明らかにしています。
また,同条2項は,民法459条2項の規定を維持するものです。
459条の2第1項は,委託を受けた保証人について,期限前に弁済などをした場合に,求償できる限度を規定しています。また,オは,弁済期までは求償できないものとしています。
459条の2第2項は,弁済期前の弁済などによる求償について,法定利息や費用につき,制限を加えています。

(2) 委託を受けた保証人の事前の求償権(民法第460条関係)
旧民法第460条第3号を削除するとともに,同条に掲げる場合(事前求償権を行使することが出来る場合)に次の場合を加える。

460条3号 保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言い渡しを受けたとき。

(解説)

事前求償権に関する規定のうち,旧民法460条3号がほとんど使われていなかった規定であるため,削除するものです。
また,民法459条の規定を前述のとおり改正するため,同条1項で規定されていた事前求償権の発生事由である「過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言い渡しを受けた」場合の規定を,ここに移しました。

(3) 保証人の通知義務(民法第463条関係)
旧民法第463条の規律を次のように改める。

463条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務者にあらかじめ通知をしないで債務の消滅行為をしたときは,主たる債務者は,債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。この場合において,相殺をもってその保証人に対抗したときは,その保証人は,債権者に対し,相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
   2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため,その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは,その保証人は,その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
   3 保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては,保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか,保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため,主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも,主たる債務者は,その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。

(解説)

1項は,委託を受けた保証人が主たる債務者に対して事前の通知を怠って弁済等を行った場合につき,求償の制限をするものです。従来は,旧民法463条が連帯債務に関する旧民法443条1項を準用していましたが,その内容を書き下ろしました。ただ,従前は,「請求を受けた」となっていたのを,「債務の消滅行為をした」と規定し直しました。
なお,この規律の適用は,委託を受けた保証人の場合に限定されています。委託を受けない保証人は,もともと,民法462条1項,2項により,求償権を制限されているからです。
事後通知義務違反について,旧民法463条1項が,同法443条2項をも準用していましたが,3項は,同様の規律を維持しました。
2項は,主たる債務者が事後通知を怠った場合につき,旧民法463条2項が,同443条2項を準用しているのと同様の規律を,その内容を書き下ろす形で維持しました。
なお,主たる債務者が事後通知を怠り,委託を受けた保証人も事前通知を怠ったケースについては,なお,解釈に委ねられています。