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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(17) 第26 契約に関する基本原則 第27 契約の成立 第28 定型約款 第29 第三者のためにする契約

第27 契約の成立

1 申込みと承諾
申込みと承諾について、次のような規律を設けるものとする。

「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」
(解説)

契約が、申込みと承諾の合致によって成立するという、当然のことを、明文で定めたものです。

2 承諾の期間の定めのある申込み(民法第521条第1項・第522条関係)
民法第521条第1項及び第522条の規律を次のように改めるものとする。

(1) 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
(2) 民法第522条を削除するものとする。 」
(解説)

(1) の本文は、民法521条1項と同じ内容であり、但書において、申込者が撤回権を留保した場合に、例外的に撤回できる旨を規定しています。
(2) は、民法522条を削除する旨を規定しています。改正法は、契約の承諾の通知に関する民法526条の発信主義の規定を削除し、民法97条の改正後の(1)の規定により、契約成立について到達主義の立場を取ることとしました。その結果、承諾の通知の延着によるリスクは、承諾の意思表示をする者が負担すべきとして、522条を削除することとしたのです。

3 承諾の期間の定めのない申込み(民法第524条関係)
民法第524条の規律を次のように改めるものとする。

「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。 」
(解説)

承諾の期間を定めないでした申込みにつき、民法524条が隔地者間だけでなく、一般的に適用されることを前提にして規定するとともに、但書において、申込者が撤回する権利を留保した場合は、この限りでない旨も規定しました。

4 対話者間における申込み
対話者間の申込みについて、次のような規律を設けるものとする。

(1) 対話者に対してした3の申込みは、3の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
(2) 対話者に対してした3の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。 」
(解説)

(1) は、対話者間の申込みの撤回時期に関して考えられていた内容を法文化したものです。
(2) は、商法507条の解釈をもとに、非商人についても同様に考えられていた内容を、法文化したものです。また、但書で例外を定めています。

5 申込者の死亡等(民法第525条関係)
民法第525条の規律を次のように改めるものとする。

「申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失した常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示したとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。」
(解説)

申込者が申込みの発信後に死亡し、意思能力を喪失した常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合に、一定の場合に申込みの効力を否定するものです。また、後段については、相手方が申込者の死亡等をいつまでに知れば民法525条が適用されるかも明確にしています。

6 契約の成立時期(民法第526条第1項・第527条関係)
(1) 民法第526条第1項を削除するものとする。
(2) 民法第527条を削除するものとする。
(解説)

(1) は、契約の承諾に関する発信主義の規定を削除し、改正民法97条1項に従い、契約の成立時期を到達主義にあらためました。
(2) は、申込みの撤回の通知の延着に関する民法527条の規定を削除するもので、その結果、申込みの撤回通知と承諾の通知の先後で決することとなりました。

7 懸賞広告
(1) 懸賞広告(民法第529条関係)
民法第529条の規律を次のように改めるものとする。
「ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下この7において「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらず、その者に対してその報酬を与える義務を負う。」

(2) 懸賞広告の効力
懸賞広告の効力について、次のような規律を設けるものとする。

ア (3)アの広告は、その期間内に指定した行為を完了する者がないときは、その効力を失う。
イ (3)イの広告は、指定した行為の内容その他の事情を考慮して相当な期間内に指定した行為を完了する者がないときは、その効力を失う。 」

(3) 懸賞広告の撤回(民法第530条関係)
民法第530条の規律を次のように改めるものとする。

ア 懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができない。ただし、その広告において撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
イ 懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、その指定した行為をする機関を定めないでした広告を撤回することができる。ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
ウ 広告の撤回は、前の広告と異なる方法によっても、することができる。ただし、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。 」
(解説)

現行民法の懸賞広告に所定の修正をほどこしています。