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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(17) 第26 契約に関する基本原則 第27 契約の成立 第28 定型約款 第29 第三者のためにする契約

第28 定型約款

1 定型約款の定義
定型約款の定義について、次のような規律を設けるものとする。

「定型約款とは、定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)において、契約の内容とすることをその特定の者により準備された条項の総体をいう。」
(解説)

定型約款の定義を定めるものです。定型約款は、①相手方が不特定多数であり、②その内容の全部又は一部が画一的な定型取引に用いられるもので、③その約款を契約内容とすることを目的として準備され、④ある特定の者により準備された条項の総体をいいます。鉄道やホテル宿泊の約款が典型的なものです。
ところで、約款については、各種業法や消費者契約法での規制が一部にありましたが、基本的には解釈に委ねられていたところです。今回の民法改正に際し、約款についての統一的な規範がもうけられるものです。

2 定型約款についてのみなし合意
定型約款についてのみなし合意について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 定型取引を行うことの合意(3において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなす。

ア 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
イ 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
(2) (1)の規定にかかわらず、(1)の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして民法第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
(解説)

(1) は、定型約款を契約内容とする旨の合意をするか、あらかじめ定型約款準備者が定型約款を契約内容とする旨を相手方に表示していたときは、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなすことにしました。
(2) は、一定の場合に、そのような合意をしなかったものとみなす規定を置いています。消費者契約法10条と同様の枠組みで不特定多数の相手方を保護するものですが、そもそも、そのような不利益条項は、無効になるというのではなく、定型取引合意の内容に取り込まれないという構成での保護をはかっています。

3 定型約款の内容の表示
定型約款の内容の表示について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前
又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
(2) 定型約款準備者が、定型取引合意の前において、(1)の請求を拒んだときは、2の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
(解説)

(1) は、定型約款準備者の約款開示義務が生じる場合を、「定型取引合意前又は定型取引合意の後相当期間内に相手方から請求があった場合」に限っています。
(2) は、(1)の請求を拒んだ場合に、正当事由がない限り、2の(1)の合意擬制が働かないことを規定しています。

4 定型約款の変更
定型約款の変更について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
ア 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
イ 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この4の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

(2) 定型約款準備者は、(1)の規定による定型約款の変更をするときは、その効力の発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びに当該発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。

(3) (1)イの規定による定型約款の変更は、(2) の効力発生時期が到来するまでに(2)による周知をしなければ、その効力を生じない。
(4)2(2)の規定は、(1)の規定による定型約款変更については、適用しない。
(解説)

(1) は、定型約款の変更につき、相手方の一般の利益に適合するときや、契約をした目的に反せず、変更の必要性、内容の相当性、変更をする旨の合意の有、その他の事情に照らして合理性がある場合に、個別の合意なしに合意したものとみなす旨を規定しています。
(2) は、定型約款の変更につき、その効力の発生時期を定め、かつ、変更すること及びその変更後の内容をインターネットの利用など適切な方法によって周知することを義務づけています。
(3) は、そのような周知が無い場合には、変更の効力を認めない旨を規定しています。
(4) は、定型約款変更の要件を厳しく定めているので、上記2の(2)の規定は適用しないものとしています。