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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(18) 第30 売買 第31 贈与

第31 贈与

1 贈与契約の意義(民法第549条関係)
民法第549条の規律を次のように改めるものとする。

「 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。 」
(解説)

現行民法549条のうち、「自己の財産」と規定した部分を「ある財産」と改めた以外は、現行法を維持しました。
このため、贈与者が自ら対象財産を所有していることは要件でなくなりました。ただ、その財産を他人から取得して、相手方に引き渡す義務まで生じるのかどうかは、解釈に委ねています。
なお、現行法の解釈としては、贈与契約そのものは有効とした上で、原則として贈与者は担保責任を負わないから、権利を取得する義務はなく(560条は適用されない。)、取得できれば受贈者に引き渡す義務があるとする考え方があります(内田民法Ⅱ168頁)。

2 書面によらない贈与の解除(民法第550条関係)
民法第550条の規律を次のように改めるものとする。

「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りではない。」
(解説)

民法550条の規定のうち、「撤回」を「解除」としたほかは、規定を維持しました。
ところで、この「撤回」の用語は、民法の現代語化が行われた平成16年改正によって使われるようになったもので、その改正前は、「之ヲ取消スコトヲ得」とされていました。要綱は、解除という言葉を使い、その法的な性質を明瞭に示しました。なお、履行が終わった部分を解除できない点は、そのまま維持されました。

3 贈与者の引渡し義務等(民法第551条関係)
民法第551条第1項の規律を次のように改めるものとする。

「 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。」
(解説)

現行民法551条1項につき、法定責任説の立場では、特定物についてのみ適用され、不特定物については、一般の債務不履行の規定が適用されると解釈していました。
しかし、御中元のサラダオイルが不良品であったら、贈与者は自らに帰責事由がないことを立証できない限り債務不履行責任を負う、というのは不当であろうとし、売主の担保責任の場合と同様、不特定物にも適用されると解すべきであるとの立場がありました(内田民法Ⅱ168頁)
本要綱は、契約責任説の立場に立ち、無償契約である贈与契約の趣旨に適合する引渡し義務の内容として、贈与の目的として特定した時の状態で引渡し又は移転することを約束したものと推定しています

以上