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民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(22) 第35 請負

27・6・11

本項が取り上げる範囲

第35 請負

第35 請負

1 仕事を完成することができなくなった場合等の報酬請求権
仕事を完成することができなくなった場合等の報酬請求権について、次のような規律を設けるものとする。

次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
(1) 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
(2) 請負が仕事の完成前に解除されたとき。 」
(解説)

民法641条の規定について、「建物その他の土地の工作物の工事請負契約につき、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に右契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のない限り、気施工部分については契約を解除することができず、ただ未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎないものと解するのが相当である。」旨の判決があります(最判昭和56年2月17日)。
改正案は、判例の趣旨を踏まえ、さらにその範囲を拡大して、仕事の完成不能や仕事の完成前に解除された場合にも、注文者が受ける利益の割合に応じて、一部完成とみなして、報酬請求権を認めました。
なお、履行不能については、注文者の責に帰することができない事由によって仕事を完成できなくなったことが要件となっていますが、①当事者双方の責めに帰すべき事由による履行不能と、②請負人の責めに帰すべき事由がこれに該当します。注文者の責めに帰すべき事由による履行不能の場合には、危険負担に関する第13の2の(2)の規定によることになります。

2 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任
(1) 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の修補請求権等及び契約解除(民法第634条・第635条関係)
民法第634条及び第635条を削除するものとする。
(注)この改正に伴い、民法第639条及び第640条も削除するものとする。

(2) 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任の制限(民法第636条関係)
民法第636条の規律を次のように改めるものとする。
「 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由とする履行の追完の請求、報酬の減額請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。 」

(3) 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の注文者の権利の期間制限(民法第637条関係)
民法第637条の規律を次のように改めるものとする。
「ア (2)本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由とする履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
イ アの規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)に目おいて、請負人がアの不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。 」

(4) 仕事の目的物である土地工作物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任の存続期間(民法第638条関係)
民法第638条を削除するものとする。
(解説)

要綱は、売買における売主の担保責任を債務不履行責任と構成しており、請負における担保責任と同質のものと考えています。
そのため、民法559条により、請負にも売買の担保責任の規定を準用することとし、民法634条を削除することにしました。
また、同様の理由から、民法639条及び同640条も削除することにしました。
民法635条も削除することとしましたが、前段と後段とで、削除する理由が異なります。
民法635条前段については、債務者の帰責事由の有無を問わずに契約解除を認める第12の解除の一般原則を適用すれば足りるとして削除しました。
民法635条後段は、建物その他土地の工作物についてだけ、特に解除を制限する理由がないとして削除されました。
民法636条については、その趣旨は維持したまま、「瑕疵」という概念を用いず、「契約内容適合性」の観点から規定を整理し直したものです。
民法637条は、担保責任の存続期間について、引渡しないし仕事が終了したときから1年間としています。この点について、改正案は、契約内容不適合を注文者が知ったときから1年以内に、通知しないと、担保責任の追及ができないこととしました。

3 注文者についての破産手続の開始による解除(民法第642条関係)
民法第642条第1項前段の規律を、次のように改めるものとする。

「 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。 」
(解説)

民法642条1項前段は、注文者が破産手続開始決定を受けた場合に、請負人又は破産管財人が契約解除をすることができる旨を規定していました。
この点につき、破産管財人の解除権はそのまま残し、請負人の解除権については、仕事を完成しない間に限定しました。
注文者が破産したときに、すでに仕事が完成している場合には、請負人に解除を認めなくても、さらなる損害を生じるおそれは少ないと考えられたことによるものです。

以上