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講演録のコーナー

講演録について

公職選挙法違反事件について(2)

連座制

連座制とは、基本的に、公職の候補者等であった者以外の一定の対象者(連座対象者)が、一定の選挙犯罪(連座犯罪)を犯し、一定の刑に処せられたときという要件(連座要件)を満たす場合には、原則として一定の手続(連座訴訟手続)を経て、公職の候補者等であった者の当選を無効とするなどの制裁効果(連座効果)を発生させるものです。
公職選挙法にその規定があります。連座制については、詳しくは、近代警察社刊「公選法上の連座訴訟の解説―裁判例の外観―野々上尚編著」などを見てください。
連座制の詳細はそれを読んでいただくとして、連座対象者が公判請求されず、罰金で済んだ場合には、連座制が適用されない場合があります(もちろん、罰金だけで適用がある場合もありますが)。さらに、条文上は、過失がなければ免責される場合もあります。
これらのことから、連座対象者が罰金ですむこと、そして、連座対象者につき、候補者等が相当の注意をして過失がないことの二つが重要であることがわかります。
従って、選挙運動期間中はもとより、公示前であっても、公選法違反が出ないように十分に監督することは重要です。会社法でいう内部統制の強化と同じ考え方です。
最近、金銭買収はほとんど姿を見なくなりましたが、近時、捜査機関は、運動買収を摘発する傾向にあり、特に運動買収には十分に注意して下さい。

選挙運動とは何か。

選挙運動として規制されるかどうかは、「選挙運動」の定義に該当するかどうかで決まります。
ところで、選挙運動とは、「特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者に当選を得させる目的をもって、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすること」というのが判例の定義です。すなわち、
@選挙と候補者が特定されていること
Ⓐ当選のため投票を獲得する目的をもった行為であること
Ⓑ投票獲得に直接又は間接に必要かつ有利な行為であること
が必要です。
この定義から、立候補準備行為、地盤培養行為、後援会活動などは選挙運動ではないと言われています。それらのことについては、たとえば、立花書房刊の「Q&A 選挙と捜査 渡辺咲子著」のQ7〜9が参考になるでしょう。詳しくはそちらをお読みください。

罰金か公判請求かの相場感覚

弁護人をしていても、当該事件を、検察官が公判請求にするのか、それとも略式命令による罰金で済ませるのかを予想することは非常に困難です。
ただ、一般的に言えるのは、詐欺投票や選挙の自由妨害などは公判請求の可能性大だが、買収については、略式か公判請求かは金額の大小に大きく影響されると思われることです。また、個別訪問や文書・図画については、量によると思われます。

インターネットと選挙運動

公示(告示)日以後にホームページの開設や更新をすることが、公選法違反となるかが問題となります。これについては、コンピューターのディスプレイ上に表示された文字等も文書図画に該当すると解釈されており、ホームページの開設や書き換えは「頒布」に該当すると解釈されているので、避けた方がよいでしょう。
これについては、インターネットによる選挙運動を認めないのは憲法違反として提訴したケースがありますが、東京高裁平成17年12月22日判決は、「ホームページを開設することは、インターネットを通じて不特定多数の者がホームページにアクセスすることを期待し、不特定多数の者に対してホームページの画像の到達することを目的とするものであるから、現実にインターネットを通じて画像が送信されれば、これが上記頒布に当たることは明らかである。」と判示しました(ぎょうせい刊、安田充ほか編逐条解説公職選挙法1109頁に収録)。
「05年衆院選比例北関東ブロック選挙無効訴訟実行委員会」のホームページによると、同訴訟は、平成19年2月16日付で上告棄却・上告不受理の決定が出たようです。
まだまだ話したいことはたくさんありますが、この程度にしておきます。

以上