スマホメニュー

法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(19) 第32 消費貸借

27・6・11

本項が取り上げる範囲

第32 消費貸借

第32 消費貸借

1 消費貸借の成立等(民法第587条関係)
民法第587条に次の規律を付け加えるものとする。


(1) 民法第587条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
(2) 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
(3) 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
(4) 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、(1)から(3)までの規定を適用する。」
(解説)

従来の民法は、消費貸借契約を要物契約としていました。しかし、要綱は、要物契約としての消費貸借契約と、諾成契約としての消費貸借契約の二本立てにしました。その上で、諾成契約としての消費貸借契約については、(1)の規定により、当事者に慎重さをもとめ、書面によることを要件としました。
また、(2)では、諾成的消費貸借契約について、借主に金銭を受領する義務がない(すなわち、借りる義務がない。)ことを前提に、金銭を受け取るまでは、契約解除ができる旨を規定しています。また、解除によって損害を受けたときには、貸主は、借主に対して賠償の請求ができる旨を規定していますが、利息の定めや期限の定めがあるからといって、借りる義務までないので、当然にそれが損害になるものではありません。
(4)は、電磁的記録による消費貸借を、書面によって契約がなされたものとみなし、(1)から(3)までの規定を適用することにしています。

2 消費貸借の予約(民法第589条関係)
民法第589条を削除するものとする。
(解説)

改正法が諾成的な消費貸借契約を認めたことから、消費貸借の予約の機能はそれによって果たせる上、消費貸借の予約という構成を利用して、諾成的消費貸借契約が書面によることを回避する事態が生じることも考え、民法589条の消費貸借の予約の規定を削除しました。

3 準消費貸借(民法第588条関係)
民法第588条の規律を次のように改めるものとする。

「金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。」
(解説)

消費貸借契約に基づく債務を消費貸借の目的とすることによる準消費貸借も、実務ではよく用いられています。しかし、改正前の民法588条の準消費貸借に関する規定は、「消費貸借によらないで」と定めていたため、改正法は、「金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において」と規定し、消費貸借契約に基づく債務を消費貸借の目的とする準消費貸借が認められることを明確にしました。
また、準消費貸借契約は、その契約に基づいて金銭等を相手方に引き渡すことが予定されていないため、書面によることは要求されていません。

4 利息
利息について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
(2) (1)の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。 」
(解説)

(1)は、消費貸借契約は、無利息が原則であることを規定しています。
(2)は、利息に関する特約がある場合でも、利息が発生するのは、金銭その他の物を受け取った日以後の利息であることを規定しています。(2)については、諾成的な消費貸借契約について、特に意味があると思われます。

5 貸主の引渡義務等(民法第590条関係)
民法第590条の規律を次のように改めるものとする。


(1) 民法第590条第1項を削除するものとする。
(2) 第31の3及び民法第551条第2項の規定は、4(1)の特約のない消費貸借について準用する。
(3) 4(1)の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。」
(解説)

(1)は、利息付消費貸借における貸主の担保責任に関する民法590条1項を削除するものです。利息付の消費貸借契約は、有償契約なので、売買の規定が準用されます。従って、売買の追完請求権などの規定が適用されるので、消費貸借契約のところに、特別の規定を置く必要が認められないことによるものです。
(2)は、利息の特約がない場合に、同じく対価がない贈与契約における第31の3の規定(贈与の目的として特定したときの状態で引き渡すことを約したものと推定する旨の規定)や、民法551条2項の負担付贈与の規定を準用する旨の規定が置かれました。
(3)は、民法590条2項前段の規定で、無利息の消費貸借契約について認めていた考え方を、利息付消費貸借にも拡張して適用することとし、その内容も、改正法の契約説的な立場から、「瑕疵」ではなく、「契約不適合」の文言を用いています。

6 期限前弁済(民法第591条第2項・第136条第2項関係)
民法第591条第2項の規律を次のように改めるものとする。


(1)借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
(2)当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。」
(解説)

民法591条1項を維持した上で、同条2項に、期限前返済によって貸主が損害を受けた場合に賠償請求ができる旨の規定を追加しました。

以上