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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(21) 第34 使用貸借

27・6・11

本項が取り上げる範囲

第34 使用貸借

第34 使用貸借

1 使用貸借の成立(民法第593条関係)
民法第593条の規律を次のように改めるものとする。

「 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」
(解説)

使用貸借契約の冒頭規定である民法593条は、「相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」として、使用貸借契約を要物契約としていました。しかし、改正法は、「ある物を引き渡すことを約し、」と規定し、使用貸借契約を諾成契約に変更しました。
使用貸借が、経済的な取引の一環として行われることも多いため、目的物が引き渡されるまで契約上の義務が生じないのでは取引の安全を害するおそれがあり得ることを理由としています(中間試案の補足説明469頁)。
諾成契約化によって生じ得る論点として、目的物引渡し前の当事者の破産等については、破産法等の解釈に委ねることにしています。
また、引渡し前の契約解除については、3の(1)に新たな規定を設けています。

2 使用貸借の終了(民法第597条・第599条関係)
民法第597条第1項及び第2項本文並びに第599条の規律を次のように改めるものとする。

(1) 当事者が使用貸借の期間を定めたときは,使用貸借は,その期間が満了した時に終了する。
(2) 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において,使用及び収益の目的を定めたときは,使用貸借は,借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
(3)使用貸借は,借主の死亡によって終了する。 」
(解説)

借用物の返還時期というタイトルで規定されていた民法597条の規定を整理し、2では、一定の事由が生じた場合の使用貸借契約の終了について、次の3では、契約解除による使用貸借契約の終了について規定しました。
一定の事由による契約終了のうち、(1)は、使用貸借の期間を設定した場合の契約終了で、民法597条1項に対応した規定です。
また、(2)は、当事者が期間を定めていなかった場合に、当事者が使用及び収益の目的を定めていたときに、その目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する旨を規定しています。民法597条2項前段に対応した規定です。
さらに、(3)は、借主の死亡による終了であり、民法599条に対応する規定です。
民法597条2項但書の規定は、次の3の(2)の契約解除事由として再構成されました。

3 使用貸借の解除(民法第597条関係)
民法第597条第2項ただし書及び第3項の規律を次のように改めるものとする。

(1) 貸主は,借主が借用物を受け取るまで,契約を解除することができる。ただし,書面による使用貸借については,この限りでない。
(2)貸主は,2(2)に規定する場合において,2(2)の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは,契約の解除をすることができる。
(3)当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは,貸主は,いつでも契約の解除をすることができる。
(4) 借主は,いつでも契約の解除をすることができる。 」
(解説)

(1)ないし(3)は,貸主側からの解除事由を,(4)は借主側からの解除権を規定しています。
(1)は,使用貸借契約の諾成契約化に伴い,借用物の引き渡し前の,貸主側からの解除を認めたものです。但書は,書面による諾性的使用貸借契約の場合には,契約の際に慎重な判断をしていると思われるので,特に契約の拘束力を弱める必要がないとの配慮から,引渡し前の解除を認めないものです。
(2)は,使用貸借の期間を定めなかった場合で,使用及び収益の目的を定めていた場合に,その目的に従い,借主が使用及び収益をするに足りる期間を経過したときに,貸主に契約解除権を認めるものです。民法597条2項但書に対応する規定です。
(3)は,使用貸借の期間,使用収益の目的のいずれも定めていない場合に,貸主は,いつでも契約の解除ができることを定めた規定です。民法597条3項に対応する規定です。

4 使用貸借終了後の収去義務及び原状回復義務(民法第598条関係)
民法第598条の規律を次のように改めるものとする。

(1) 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
(2) 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
(3) 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 」
(解説)

使用貸借契約終了後の収去義務及び原状回復義務につき、賃貸借終了後の収去義務及び原状回復義務に関する第33の13の改正規定と同様の改正規定を置いたものです。
ただし、自然損耗と経年変化を、原状回復義務の対象である損傷から除く旨の括弧書の規定は、使用貸借契約の規定では、設けていません。
賃貸借契約の場合には、通常損耗が生ずることを前提に減価償却費や修繕費等の必要経費を折り込んで賃料の額を定めるのが一般的であるため、賃借人が通常損耗の回復義務を負うとすると、賃借人にとって予期しない特別の負担を課せられることになることから、原則として賃借人は通常損耗の回復義務を負わないとされています。
しかし、賃料支払い義務のない使用貸借においては、無償で借りる以上は借主が通常損耗もすべて回復するという趣旨であることもあるし、逆に、無償で貸すということは貸主がそれによって生じた通常損耗もすべて甘受するという趣旨であることもあり、個々の使用貸借契約の趣旨によって様々であると考えられることから、合意がない場合を補う任意規定を置かないこととしたものです(中間試案の補足説明471頁)。

5 損害賠償の請求権に関する期間制限(民法第600条関係)
民法第600条に次の規律を付け加えるものとする。

「民法第600条に規定する損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」
(解説)

賃貸借の第33の14の規定と同じ規定を置きました。そこで解説したので、説明は省略します。

以上