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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(23) 第36 委任

27・6・11

本項が取り上げる範囲

第36 委任

第36 委任

1 受任者の自己執行義務
受任者の自己執行義務について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
(2) 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。」
(解説)

(1)については、民法104条と同趣旨の規定を設けたものです。
(2)については、代理権を授与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときには、復受任者が委任者に対して、その権限の範囲内で、受任者と同一の権利義務を負うことを規定しています。民法107条と同趣旨の規定を置いたものです。

2 報酬に関する規律
(1) 報酬の支払時期(民法第648条第2項関係)
報酬の支払時期に関し、民法第648条第2項に付け加えて、次のような規律を設けるものとする。
「委任事務の処理により得られた成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。」

(2) 委任事務を処理することができなくなった場合等の報酬請求権(民法第648条第3項関係)
民法第648条第3項の規律を次のように改めるものとする。
「ア 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
(ア)委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
(イ)委任が履行の中途で終了したとき。
イ 第35の1の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を約した場合について準用する。」
(解説)

(1)は、新たに成果報酬型の委任契約を認め、その報酬の支払いと成果の引渡しは同時履行の関係にある旨を規定しました。
(2)のアは、委任契約が途中で履行できなくなったときや、履行の途中で終了した場合にも、受任者に割合的な報酬請求を認めています。
民法648条も、履行の途中で終了した場合に、割合的な報酬請求権を認めていましたが、「受任者の責めに帰することができない事由」を要件としていました。しかし、雇用契約が労働者の責めに帰すべき事由によって途中で終了した場合にも、割合的な賃金請求権が認められるものと解されていますが、そうであれば、委任契約の場合だけ、受任者の責めに帰することができない事由を要求する必要性に乏しいため、その要件を不要としました。
(2) のイは、成果報酬型の委任契約が請負に近いことから、請負に関する割合的な報酬請求を認めた第35の1の規定を準用しています。

3 委任契約の任意解除権(民法第651条関係)
民法第651条第2項の規律を次のように改めるものとする。

「 民法第651条第1項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
(1) 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
(2) 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。」
(解説)

民法651条1項は、委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる旨を規定しています。
ところが、判例は、「受任者の利益をも目的とする」委任につき、かつては、民法651条によって一方的には解除できないもとして同条による解除を制限する法理をとなえ、その後の判例(最判昭和56年1月19日など)で解除を制限する法理が緩和され、やむを得ない事由があれば解除できるし、やむを得ない事由がなくても、委任者が解除権自体を放棄したものとは解されない事情がある場合には、民法651条で解除できるものとしました。
要綱は、判例法理が解除権を制限したのは、受任者の保護にあると考え、受任者の保護は、解除権の制限によってではなく、解除による損害を金銭で填補すれば足りるとの判断から、(2)で受任者の利益をも目的とする委任契約も解除されることを前提に、やむを得ない事由がない場合には、損害賠償を認めることとしました。ただ、そこにいう「受任者の利益をも目的とする」かどうかの基準には、もっぱら報酬を得ることによるものは除くこととしました。

以上