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法改正のコーナー

知財・労働事件などの知識

労働契約法改正について

H25/1/28

そもそも労働契約法とは何か

労働契約法は、平成19年11月28日に参議院で可決成立し、同20年3月1日から施行されました。

個別的な労働関係においては、基本的な法律として、従前から労働基準法が存在していましたが、同法では労働契約に関する基本的な定義はありませんでした。

労働契約法では、新たに労働契約の定義を定め(労働契約法6条)、次に述べるように、労働契約における新た基本理念をうたっております。

具体的には、労使が対等な立場での合意の原則(同法3条1項)、就業の実態に応じた均衡、仕事と生活の調和、信義誠実の原則、権利濫用の禁止などの労働契約の基本理念の宣言(同法3条2項〜5項)、合意の原則の再確認(同法6条、8条)、就業規則と労働契約の関係(同法7条、同法9条〜13条)、出向命令、懲戒権の行使、解雇における濫用の禁止(同法14条〜16条)などです。

今回の改正とは

今回、「労働契約法の一部を改正する法律」(平成24年8月10日法律第56号)が、平成24年8月10日に公布されました。

今回の改正では、有期労働契約(1年とか6か月などの期間の定めのある契約のこと)について、次の3の(1)ないし(3)で述べる3つのルールを規定しています。その3つのうち、2については、従来からの判例法理の確認にすぎないので、公布と同時に施行されましたが、1と3については、平成25年4月1日から施行されます。

改正法が定める3つのルール

(1) 無期労働契約への転換

有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。

すなわち、同一の使用者との間で、二つ以上の有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合には、労働者が申込みをしたときは、使用者がこれを承諾したものとみなし、無期労働契約に転換します。

なお、通算の契約期間のカウントは、施行日である平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象です。ですから、平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は通算契約期間に含めることができません。

(2) いわゆる「雇止め法理」の法定化

最高裁判所の判例(東芝柳町工場事件最高裁判決など参照)で確立した、いわゆる「雇止め法理」が、ほぼそのままの内容で法律に規定されました。一定の場合には、使用者による雇止め(有期契約の更新拒否)が認められないことになるルールです。判例の変更によっても変更できないように法規範化した点に意味があります。

本来、有期労働契約は、使用者が更新を拒否した場合には、契約期間の満了により雇用が終了することになります。これを「雇止め」といいます。

この「雇止めの法理」については、最高裁判所は、当初は、有期契約が反復更新され、期間の定めのない契約と実質上異ならない状態に至った場合、その雇止めには解雇権濫用法理が類推適用され、客観的・合理的な理由が要求されるとするタイプ(いわゆる実質無期契約タイプ)に適用されるとしていました(上記東芝柳町工場事件最高裁判決など)が、その後、その適用範囲を広げ、そこまでの状態に至らなくても、雇用関係にある程度の継続が期待され、契約が更新されていた場合にも解雇権濫用法理が類推適用される(いわゆる期待保護タイプ・日立メディコ事件最高裁判決参照)としました。

今回の労働契約法改正によって、最高裁判所で認められていた上記@、Ⓐの範囲の雇止め法理の内容を、そのままの形で条文化しました。

(3) 不合理な労働条件の禁止

有期契約の労働者と無期契約の労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールです。

改正の背景と今後の問題

今回の改正の背景にあるのは、欧州に比べて日本の有期労働者の雇用保護が薄いという認識だと思われます。

しかし、今回の改正によって、有期労働契約が5年に達する直前での雇止めの増加が懸念されるところです。しかも、その場合、たとえ雇止の法理により、雇止めが無効だと判断されたとしても、それによって有期契約が更新される効果があるだけです。すなわち、裁判所によって、雇止めが濫用だと判断されても、それによって、有期労働契約が無期労働契約に転換されるわけではないのです。従って、なお問題は残ります。将来のさらなる立法の課題だと思われます。

以上。