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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(13) 第18 保証債務

6 保証人保護の方策の拡充
(1) 個人保証の制限
個人保証の制限について,次のような規律を設ける。

465条の6 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は,その契約の締結に先立ち,その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ,その効力を生じない。

     2 前項の公正証書を作成するには,次に掲げる方式に従わなければならない。

       一 保証人になろうとする者が,次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じ,それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。
         イ 保証契約(ロに掲げるものを除く。) 主たる債務の債権者及び債務者,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには,その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には,債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか,主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか又は他に保証人がいるかどうか,又は他に保証人があるかどうかにかかわらず,その全額について履行する意思)を有していること。
         ロ 根保証契約  主たる債務の債権者及び債務者,主たる債務の範囲,根保証契約における極度額,元本確定期日の定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには,極度額の限度において元本確定期日又は5(2)ア若しくはイに掲げる事由その他の元本確定事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には,債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか,主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか,又は他に保証人があるかどうかにかかわらず,その全額について履行する意思)を有していること。

       二 公証人が,保証人になろうとする者の口述を筆記し,これを保証人になろうとする者に読み聞かせ,又は閲覧させること。

       三 保証人になろうとする者が,筆記の正確なことを承認した後,署名し,印を押すこと。ただし,保証人になろうとする者が署名することができない場合は,公証人がその事由を付記して,署名に代えることができる。

       四 公証人が,その証書は前3号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名し,印を押すこと。

     3 前2項の規定は,保証人になろうとする者が法人である場合には,適用しない。
(解説)

1項は,①事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約や,②主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約について,その保証人が個人である場合(3項に規定)に,2項の規定に従って,1か月以内に作成された公正証書によって保証意思が確認された場合でなければ,効力を生じないものとしました。
事業に関する貸金債務に関連して,保証をする場合に限っていますが,その保証契約の時点では,保証債務の履行が現実に求められるか否かが未確定であるために,安易に保証人になった結果,莫大な保証債務を履行しなければならなくなり,生活破綻に追い込まれるケースがあり,そのような事態を防止するために,公正証書をもって保証意思の確認をすることを義務付けたのです。
2項では,公正証書による保証意思の確認手続きにつき,詳細な規定を置いています。
なお,465条の7では,民法969条の2を参考に,保証人が口を聞けない者,耳が聞こえない者に関する公正証書の作成に関する督促を設けています。

(2)個人保証(求償権保証)の制限
個人保証(求償権保証)の制限について,次のような規律を設ける。

465条の8 第465条の6第1項及び第2項並びに前条の規定は,事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約について準用する。主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれている根保証契約も,同様とする。
     2 前項の規定は,保証人になろうとする者が法人である場合には,適用しない。
(解説)

主たる債務が465条の6の場合と同様の主債務である場合でも,求償債務を保証する場合には,同条の適用がありません。そこで,そこで,改正法は,求償債務を主債務とする保証契約の場合にも,個人が保証人である場合には(2項の規定),465条の6第1項及び2項の規定を準用することとしました。

(3)個人保証の制限の例外
個人保証の制限の例外について,次のような規律を設ける。

465条の9 前3条の規定は,保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については,適用しない。
       一 主たる債務者が法人である場合のその理事,取締役,執行役又はこれらに準ずる者
       二 主たる債務者が法人である場合の,次に掲げる者

         イ 主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者
         ロ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
         ハ  主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
         ニ イ,ロ又はハに掲げる者に準ずる者
       三 主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に従事している主たる債務者の配偶者
(解説)

本改正法は,多くの中小企業や個人事業主の場合に,経営者に対する個人保証をする実際的な必要性があることを配慮し,個人保証保護の例外を設けました。その具体的な内容は,改正法の規定のとおりです。

(4) 契約締結時の情報提供義務
契約締結時の情報提供義務について,次のような規律を設ける。

465条の10 主たる債務者は,事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業の為に負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは,委託を受ける者に対し,次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
        一 財産及び収支の状況
        ニ 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
        三 主たる債務の担保として他に提供し,又は提供しようとするものがあるときは,その旨及びその内容

      2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず,又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし,それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において,主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず,又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは,保証人は,保証契約を取り消すことができる。

      3 前2項の規定は,保証する者が法人である場合には,適用しない。
(解説)

な情報提供を義務づけることとし,債権者がその義務に違反したことを知り得た場合には,保証契約を取り消す余地を認めました。

(5) 保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務
請求による履行状況の情報提供義務について,次のような規律を設ける。

458条の2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,保証人から請求があったときは,債権者は,保証人に対し,遅滞なく,主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

(解説)

債権者の委託を受けた保証人に対する情報提供義務を規定しています。

(6) 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務について,次のような規律を設ける。

458条の3 主たる債務者が期限の利益を有する場合において,その利益を喪失したときは,債権者は,保証人に対し,その利益の喪失を知った時から2箇月以内に,その旨を通知しなければならない。
     2 前項の期間内に通知をしなかったときは,債権者は,保証人に対し,主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知をするまでに生ずべき遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
     3 前2項の規定は,保証人が法人である場合には,適用しない。

(解説)

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合に,債権者が保証人に対してその情報を提供すべき義務を定め,かつ,義務違反の効果を定めたものです。
本規定も,保証人が個人の場合に限って適用されます(3項の規定)。

以上