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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(6) 第8 債権の目的 第9 法定利率

30・8・14

(6)で取り上げる範囲

第8 債権の目的
第9 法定利率

第8 債権の目的(法定利率を除く。)

1 特定物の引渡しの場合の注意義務(民法第400条関係)
民法第400条の規律を次のように改める。

400条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは,債務者は,その引渡しをするまで,契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって,その物を保存しなければならない。
(解説)

改正前の民法400条は,債権の目的が特定物の引き渡しであるときに,「債権の目的が特定物の引渡しであるときは,債務者は,その引渡しをするまで善良な管理者の注意をもって,その者を保存しなければならない。」と規定していました。
しかし,改正した民法400条では,「契約その他の当該債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって」と規定し,民法400条の規定が,契約だけでなく,事務管理,不当利得,不法行為など,債務の発生原因を問わず適用される条項であることを明らかにしました。
それとともに,善管注意義務は,個々の取引関係における個別の事情と無関係に客観的かつ一律に定まるものではなく,たとえばその債権の発生原因が契約である場合,その契約の性質(有償か無償か),当事者が契約をした目的,契約締結に至る経緯をはじめとする契約の趣旨に照らして,債権の目的が特定物の引き渡しであるときの,物の保存に関する注意義務の程度を判断する趣旨であることを明らかにしたものと考えられます(一問一答66頁,中間試案の補足説明90頁参照)。

2 選択債権(民法第410条関係)
民法第410条の規律を次のように改める。

410条 債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において,その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは,債権は,その残存するものについて存在する。
(解説)

旧民法の410条は,その2項において,「選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能になったときは,前項の規定は,適用しない。」と規定し,その場合には,給付が特定しないことにしていました。
改正法は,「選択権を有する者の過失」によって不能となった場合に,残存するものが債権の目的となる旨を規定しているので,その反対解釈として,それ以外の場合には,給付が特定しないことになり,選択権者は,不能の給付を選択して,契約解除をする,という選択肢を取ることができます。
選択権を有しない債務者は,もともと選択権者の選択に従わざるを得ない立場にありますし,不能の給付を選択して契約を解除することが合理的な場合もありうるので,このような改正をしたものです。