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民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(10) 第15 債権者代位権

30・8・14

本項が取り上げる範囲

第15 債権者代位権

第15 債権者代位権

1 債権者代位権の要件(民法第423条第1項関係)
民法第423条第1項の規律を次のように改める。

423条1項 債権者は,自己の債権を保全するため必要があるときは,債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし,債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は,この限りでない。
(解説)

旧民法423条但書では,代位できないものとして,一身専属権のみを規定していますが,改正法は,これに「差押えを禁じられた権利」を加えるものです。
強制執行の引き当てになる債務者の財産のことを責任財産と呼びますが,債権者代位権と詐害行為取消権は,債務者の責任財産を保全する制度です。
それゆえ,差押えを禁じられた権利は,責任財産の保全を目的とする債権者代位権の対象として適さないとの判断に基づき,「差押えを禁じられた権利」を加えるものです。

2 債権者代位権の要件(民法第423条第2項関係)
民法第423条第2項の規律を次のように改める。

423条2項 債権者は,その債権の期限が到来しない間は,被代位権利を行使することができない。ただし,保存行為は,この限りでない。
  同条3項 債権者は,その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは,被代位権利を行使することができない。
(解説)

旧民法423条2項は,期限が到来するまでは,原則として債権者代位ができない旨を規定していました。そして,その例外が,①裁判上の代位の場合と,②保存行為の場合でした。
改正法は,そのうち,①の裁判上の代位の規定を削除しました。民事保全法による保全処分の制度が充実した現行法秩序のもとで,維持する必要がないと判断し,ほとんど利用されていなかった裁判上の代位の制度を廃止したのです。その結果,上記のような規定となりました。
また,旧法下でも,債権者代位制度は,本来的には,後の強制執行に備えて責任財産を保全するためのものであるから,強制執行により実現することのできない債権(破産免責で免責を受けた債権など)に基づいて債権者代位権を行使できないと一般に解釈されていました。そこで,423条3項は,その旨を明文化したのです(一問一答91頁)。

3 代位行使の範囲
代位行使の範囲について,次のような規律を設ける。

423条の2 債権者は,被代位権利を行使する場合において,被代位権利の目的が可分であるときは,自己の債権の額の限度においてのみ,被代位権利を行使することができる。
(解説)

判例は,金銭債権を代位行使する場合に,「債権者は自己の債権額の範囲においてのみ債務者の債権を行使しうる」(最判昭和44年6月24日判決)としています。改正法は,代位する権利の客体が可分な場合に,この判例の考え方を取り入れています。その根底には,債権者の債務者の財産管理への介入は抑制的であるべきだとの観点が働いているものと思われます(潮見改正法の概要78頁)。

4 直接の引渡し等
直接の引渡し等について,次のような規律を設ける。

423条の3 債権者は,被代位権利を行使する場合において,被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは,相手方に対し,その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において,相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは,被代位権利は,これによって消滅する。
(解説)

判例は,動産や金銭につき,代位債権者から債務者に対して直接引き渡せと請求する権利を認めています(金銭債権につき,大判昭和10年3月12日判決)。
改正法は,このような判例の考え方を明文化するとともに,それによって代位の対象となった権利が引き渡しによって消滅するという,当然のことがらを規定しています。