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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(11) 第16 詐害行為取消権

10 詐害行為の取消しの効果(民法第425条関係)
旧民法第425条の規律を次のように改める。

425条 詐害行為取消請求を認容する確定判決は,債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。
(解説)

旧法下の判例は,相対的取消説をとり,詐害行為は,被告とされた受益者もしくは転得者と取消債権者との関係で取り消されるだけであり,債務者との関係では有効であるとする立場をとっていましたが,このような立場では,受益者と債務者との公平を欠くとの考え方から,本規定は,そのような相対的取消説の立場をとらず,債務者に対しても,詐害行為取消し判決の効力が及ぶものとしました。
また,それにともなって,受益者の反対給付などにつき,以下の規定を設けています。

11 受益者の反対給付
受益者の反対給付について,次のような規律を設ける。

425条の2 債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは,受益者は,債務者に対し,その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者が当該反対給付の返還をすることが困難であるときは,受益者は,価額の償還を請求することができる。
(解説)

425条で説明したとおり,詐害行為取消しの判決の効力を債務者にも及ぼすことにしたことと軌を一にして,受益者による反対給付の返還請求や価格の償還を請求できるものとしました。

12 受益者の債権
受益者の債権について,次のような規律を設ける。

425条の3 債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において,受益者が債務者から受けた給付を返還し又はその価額を償還したときは,受益者の債務者に対する債権は,これによって原状に復する。
(解説)

判例は,債務者の受益者に対する弁済や代物弁済が取り消された場合には,債務者の受益者に対する債権は回復するとしていますが,本条項はそれを明文化したものです。破産法169条にも同様の条項があります。

13 転得者の反対給付及び債権
転得者の反対給付及び債権について,次のような規律を設ける。

425条の4 債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは,その転得者は,次の各号に掲げる区分に応じ,それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし,その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価格を限度とする。
       1 第425条の2に規定する行為が取り消された場合
その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
       2 前条に規定する行為が取り消された場合(424条の4の規定により取り消された場合を除く。)
その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権
(解説)

転得者がその前者から取得した財産を返還しまたはその価格を償還した場合に,受益者に対してした反対給付の返還請求や受益者に対する債権の回復を認めました。
また,但書においては,転得者の債務者に対する権利行使に上限を設けました。

14 詐害行為取消権の期間の制限(民法第426条関係)
旧民法第426条の規律を次のように改める。

426条 詐害行為取消請求に係る訴えは,債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年を経過したときは,提起することができない。行為の時から10年を経過したときも,同様とする。
(解説)

旧民法では「時効によって消滅する」とされていた2年を提訴期間と改めるとともに,旧民法では20年とされていた長期の期間も,「行為の時から10年」に短縮しています。

以上