スマホメニュー

法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(3) 第4 代理

30・8・12

(3)で取り上げる範囲

第4 代理

第4 代理

1 代理行為の瑕疵-原則(民法第101条第1項関係)
旧民法第101条第1項の規律を次のように改める。

101条 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在,錯誤,詐欺,強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には,その事実の有無は,代理人について決するものとする。
   2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には,その事実の有無は,代理人について決するものとする。
   3 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは,本人は,自ら知っていた事情について,代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても,同様とする。
(解説)

代理行為に瑕疵のある場合につき,改正法は,(1)代理人が相手方に意思表示をした場合と,(2)相手方が代理人に意思表示をした場合に分け,現行の民法101条と同様に,代理人を基準にすることを明らかにしました。
かつての判例は,代理人が詐欺をした場合にも民法101条1項を適用していましたが,代理人が詐欺をした場合の相手方の意思表示については,改正後は,上記1項,2項の適用がないと解されますので,民法96条1項によって処理されることとなります。
また,旧法101条2項は,「代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは」と規定していました。しかし,改正法(101条3項)では,その文言を削除しました。「指図」の文言に特別な意味を与えない判例(大判明治41年6月10日判決)の趣旨に従い,改正法は,上記文言を削除したものです。

3 代理人の行為能力(民法第102条関係)
旧民法第102条の規律を次のように改める。


102条 制限行為能力者が代理人としてした行為は,行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし,制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については,この限りでない。
(解説)

旧民法102条は,「代理人は,行為能力者であることを要しない。」と規定していした。その趣旨は,「代理人が契約を締結しても,その効果は本人に及ぶだけで,代理人には及ばないので,制限能力者保護の制度趣旨を妥当させる必要がないからだ。」とされていました。
しかし,その理由は,任意代理人にはよくあてはまるのですが,法定代理人(成年後見人など)の場合は,代理人を本人が選任するわけではないので,同列には扱えないとの考え方もありました。
そこで,改正法は,民法102条の規定のうち,「行為能力者」を「制限行為能力者」と改めるとともに,但書を加え,制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については,この限りでないとしました。
この但書の規定により,法定代理人である制限行為能力者が,本人である制限行為能力者のために法律行為をした場合には,取り消すことができる場合が出てくることになります。
このような但書をもうけたのは,行為能力制度における本人保護の目的を達するためと,法定代理人の選任に本人が関与しないので,代理人自身が制限行為能力者であることのリスクを本人に負わせるわけにはいかないという理由があります。
そのような改正に伴い,民法13条1項10号に,「前各号に掲げる行為を制限行為能力者(括弧内省略)の法定代理人としてすること」の規定を加えることにしました。
また,改正民法120条1項括弧書きで,(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては,当該他の制限行為能力者も含む)と規定して,当該他の制限能力者である本人及びその承継人などを取消権者に加えました。

4 復代理人を選任した任意代理人の責任(民法第105条関係)
旧民法第105条を削除する。
(解説)

民法104条は,復代理人を選任する要件として,本人の許諾か,やむを得ない事由の存在を要求しています。
それを受けて,旧民法105条は,復代理人を選任した任意代理人の責任を制限していました。
しかし,通常の債権者・債務者間の場合と特に区別して,任意代理人が復代理人を選任したときにだけ,任意代理人の本人に対する債務不履行責任を一律に軽減する理由がないので,改正法は,旧105条を削除し,債務不履行の一般規定によって処理することとしたのです。