30・8・12
第5 無効及び取消し
第6 条件及び期限
1 法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果
法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果について,121条の2の規定を設ける。
「
121条の2 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は,相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず,無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は,給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては,給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは,その行為によって現に利益を受けている限度において,返還の義務を負う。
3 第1項の規定にかかわらず,行為の時に意思能力を有しなかった者は,その行為によって現に利益を受けている限度において,返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても,同様とする。
」
新設規定です。1項は,無効な行為で給付を受領した者の,原状回復義務を明記したものです。
1項の例外として,2項は,無償行為で給付を受けた場合に,受けた当時に,無効であることを知らなかった(善意)ときは,現に利益を受けている限度において返還義務を負う旨を規定しています。
3項は,行為の時に意思能力を有しなかった場合に,現に利益を受けている限度において返還義務を負う旨を規定しています。行為の時に制限行為能力者であった者についても,同様としています。
2 追認の効果(民法第122条関係)
民法第122条ただし書を削除する。
取り消すことができる行為は,取り消されるまでは有効です。また,追認は,取消す権利を放棄し,取り消されるおそれのない確定的に有効なものにする行為です。従って,追認によって第三者を害するものではありません。そこで,民法122条の但書は,適用場面がなく,不要な規定と考えられたので,改正法では,同条の但書のみを削除することとしたのです。
3 取り消すことができる行為の追認(民法第124条関係)
旧民法第124条の規律を次のように改める。
「
124条 取り消すことができる行為の追認は,取消しの原因となっていた状況が消滅し,かつ,取消権を有することを知った後にしなければ,その効力を生じない。
2 次に掲げる場合には,前項の追認は,取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
1 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
2 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人,保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
」
追認が,取消す権利を放棄し,取り消されるおそれのない確定的に有効なものにする行為であることにかんがみて,民法124条1項の規定に「取消権を有することを知った後にしなければ」の要件を加えたものです。
そして,成年被後見人についてのみ,同様の要件を規定していた民法124条2項の規定を削除しました。
改正民法124条2項1号は,民法124条3項とほぼ同様の規定です。
同行2号は,同項1号とのバランスから,事理弁識能力を欠く常況にある成年被後見人の場合を除き,制限行為能力者が法定代理人,保佐人又は補助人の同意を得て追認したときも,取消しの原因となった状況が消滅した後にすることを要しないものとしました。