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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(13) 第18 保証債務

4 連帯保証人について生じた事由の効力(民法第458条関係)
旧民法第458条の規律を次のように改める。

458条  民法第438条,第439条第1項,第440条及び第441条の規定は,主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

(解説)

民法458条の連帯保証人について生じた事由の効力に関する規定を,連帯債務の規定の改正に合わせて変更しました。

5 根保証
(1) 極度額
旧民法第465条の2の規律を次のように改める。

465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。
     2 個人根保証契約は,前項に規定する極度額を定めなければ,その効力を生じない。
     3 民法第446条第2項及び第3項の規定は,個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

(解説)

旧民法465条の2の規定は,「金銭の貸し渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務」を「貸金等債務」と定義し,貸金等債務が主たる債務に含まれる個人根保証契約についてのみ,①極度額の定めがないと根保証契約の効力が生じない(同条2項),極度額の定めは,書面でしないと効力を生じない(同条3項),としていました。
改正法は,民法465条の2の2項,3項の適用範囲を拡大し,貸金等債務を含まない債務(但し,個人根保証に限る)についても,適用があるものとしました。
従って,たとえば賃貸借契約書の連帯保証人として個人の保証人を入れる場合にも,改正民法465条の2の個人根保証の適用範囲の拡大によって,同条が適用されることになりますから,極度額の定めをしておかないと,根保証契約そのものが無効となってしまいますので,注意が必要です。

(2) 元本の確定事由
旧民法第465条の4の規律を次のように改める。

465条の4 次に掲げる場合には,個人根保証契約における主たる債務の元本は,確定する。ただし,第1号に掲げる場合にあっては,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
       1 債権者が,保証人の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
       2 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
       3 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

     2 前項に規定する場合のほか,個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は,次に掲げる場合にも確定する。ただし,第1号に掲げる場合にあっては,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
       1 債権者が,主たる債務者の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
       2 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

(解説)

2項については,貸金等債務の根保証のみに適用される,元本確定事由です。また,2項には,「前項に規定する場合のほか」と規定されていますので,貸金等債務の根保証には,第1項に定める元本確定事由の適用もあります。
この2項に記載された元本確定事由と1項に記載された元本確定事由とを合わせると,結局のところ,旧民法465条の4の規定の内容は,そのまま維持されていることになります。
また,1項については,個人根保証契約に関する元本確定事由を定めたものです。1項の1号,2号には,保証人にそのような事由が生じた場合のみが規定されており,主たる債務者にそのような事由が生じた場合を除いています。
これは,たとえば賃貸借契約において,主たる債務者である賃借人の財務状態が悪化し,賃借人が強制執行の申し立てを受けたり,破産手続開始決定を受けても,賃貸人はなおその賃借人に目的物を貸し続けなければならない場合が多いことを配慮し,主たる債務者にそのような事由が生じた場合を除いているのです。

(3) 求償権についての保証契約(民法第465条の5関係)
旧民法第465条の5の規律を次のように改める。

465条の5 保証人が法人である根保証契約において,465条の2第1項に規定する極度額の定めがないときは,その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は,その効力を生じない。
     2 保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて,元本確定期日の定めがないとき,又は元本確定期日の定め若しくはその変更が民法第465条の3第1項若しくは第3項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは,その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は,その効力を生じない。主たる債務の範囲にその求償債権に係る債務が含まれる根保証契約も,同様とする。
     3 前2項の規定は,求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に求償権に係る債務が含まれる根保証契約の保証人が法人である場合には,適用しない。

(解説)

法人根保証では,法人が弁済した場合の求償権を確保するために,保証契約を締結する際に,求償債務について保証人を立てさせる場合があり,これを求償保証といいます。
求償保証が個人保証でなされると,個人が直接根保証をしたのではありませんが,結果的には個人が根保証をしたのと同様の内容の保証をしたことになるので,保証人には,個人が根保証をしたのと同じ保護を与える必要があります。
このような配慮から,法人による根保証契約で,個人がその求償保証をした場合にも,極度額の定めがなければ,求償権についての個人保証は無効とすることにしました(1項)。
さらに,法人保証による貸金等債務の根保証契約で,その求償権について個人保証がなされるときは,元本確定期日の定めが規制に従っていなければ,その求償権についての個人保証が無効となることにしました(2項)(中舎前掲債権法491〜492頁)。