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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(18) 第30 売買 第31 贈与

7 買主の権利の期間制限
(1) 民法第570条本文(同法第566条の準用)の規律のうち期間制限に関するものを、次のように改めるものとする。

「 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引
き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったとは、この限りでない。 」

(2) 民法第564条(同法第565条において準用する場合を含む。)及び第566条第3項を削除するものとする。
(解説)

改正法は、「種類又は品質」に関する契約不適合の場合に、買主がその不適合を知った時から1年以内にその事実を売主に通知しないと、不適合を理由とする履行の追完請求、代金の減額請求、損害賠償請求及び契約の解除をすることができない、と規定しました。
これは、目的物の引き渡しなどによって履行が完了したとの売主の期待を保護するなどのために規定されたものですが、数量不足の場合や、権利に関する契約内容の不適合の場合にまで、そのような売主の期待を保護する必要がないとの判断から、これらについては、独自の期間制限の規定を設けず、主観的起算点から5年、客観的な起算点から10年という、改正法の債権の消滅時効の規定によって処理されることとしました。

8 競売における買受人の権利の特則(民法第568条第1項)
民法第568条第1項及び第570条ただし書の規律を次のように改めるものとする。

「(1)民事執行法その他の法律の規定に基づく競売(以下この8において単に「競売」という。)における買受人は、第12の1から3までの規定並びに4(6において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。 」
(2)(1)並びに民法第568条第2項及び第3項の規定は、競売のも特的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。 」
(解説)

現行民法568条1項及び同法570条にいう「強制競売」とは、本来、判決その他の債務名義による不動産の競売のことを指し、担保権実行としての競売とは区別されています。しかし、同法の解釈として、各条に規定する「強制競売」には、「担保権実行としての競売」も含まれると解釈されていました。
改正法は、「民事執行法その他の法律の規定に基づく競売」と規定し、強制競売だけでなく、担保権実行としての競売も含まれることを明文で明らかにしました。
また、現行民法の570条但書では、瑕疵担保責任の規定は、強制競売には適用されないと規定されています。
ところで、競売は、裁判所という国家機関が中間に立っての売買でありますし、債務者も、その意思に基づかずに競売されるものです。また、競売の場合の買受人も、ある程度、瑕疵を覚悟していることから、(2)において、「(1)並びに民法第568条第2項及び第3項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。」として、競売の場合に、それらについては、売主が責任を負わないこととし、民法570条但書の趣旨を実質的に維持しました。

9 売主の担保責任と同時履行(民法第571条関係)
民法第571条を削除するものとする。
(注)民法第533条の規律を次のように改めるものとする。

「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。」
(解説)

民法533条にカッコ書きを加え、同条が担保責任と同時履行の問題にも適用されることを前提として、民法533条規定を担保責任に準用していた71条を削除しました。

10 権利を失うおそれがある場合の買主による代金支払の拒絶(民法第576条関係)
民法第576条の規律を次のように改めるものとする。

「 売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるとき、又はこれを失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。 」
(解説)

本項では、「その他の事由」を加えたほかは、民法576条をそのまま維持しました。「その他の事由」を加えたのは、「売買の目的について権利を主張する者があること」以外に、たとえば、売買の目的物に用益物権があると主張する第三者が存在するなど、それ以外の場合にも、柔軟に同条を適用できるようにするためだと思われます。

11 目的物の滅失又は損傷に関する危険の移転
危険の移転について、次のような規律を設けるものとする。

「 (1) 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この11において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
(2) 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に、当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、(1)と同様とする。 」
(解説)

(1)は、売主が買主に特定した目的物を引き渡した場合に、その引渡し以後に、目的物が、当事者双方の責に帰することが出来ない事由によって滅失し、又は損傷したときに、買主は、滅失又は損傷を理由とする履行の追完請求、代金の減額請求、損害賠償請求及び契約解除ができないものとしました。引渡し時から危険が移転するのです。
また、(2)では、売主が買主に対し、契約内容に適合する目的物の引渡しの提供をしたのに、買主がこれを受領しなかった場合に、それ以後に目的物が当事者双方の責に帰することができない事由によって滅失又は損傷した場合にも、同様に危険が買主に移転するものとしました。
しかし、売主の責に帰すべき事由によって滅失又は損傷した場合には、(1)の要件を満たさないので、危険は買主に移転せず、買主は、上記の権利を行使できます。
要綱は、売主の責に帰することができない特定物の履行不能に関する危険負担の規定を削除するとともに、履行不能による契約解除制度につき、債務者(この場合は売主)の帰責事由を解除の要件としない立場をとっており、そういう意味で、そのような場合に、解除に一元化をはかることにしていますが、立案担当者は、解除への一元化の当否と、危険の移転時期に関するルールを設けることの当否とは、論理的には別の問題であると説明しています(中間試案の補足説明429頁)。

12 買戻し(民法第579条ほか関係)
(1) 民法第579条の規律を次のように改めるものとする。
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。民法第583条第1項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。

(2) 民法第581条第1項の規律を次のように改めるものとする。
ア 売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対抗することができる。
イ アの登記がなされた後に第33の4(2)に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は、その存続期間中1年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときは、この限りでない。
(解説)

買い戻し制度を使いやすくするための若干の改正がなされます。