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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(5) 第7 消滅時効

30・8・12

(5)で取り上げる範囲

第7 消滅時効

(はじめに)

改正法でも,債権の消滅時効に関する総則規定は,従前どおり,民法総則のなかに配置されています。また,民法147条以下の時効の中断事由に関する規定は,消滅時効と取得時効に共通する中断事由とされていましたので,同条などにかわって新設された時効の完成猶予と更新などの新規定も,債権以外の権利の消滅時効や取得時効にも妥当することとなります。
また,国際的な消滅時効に関する単純化・短縮化傾向を意識し,合理性が疑わしい短期消滅時効の制度を廃止するとともに,主観的起算点から5年,客観的な起算点から10年で基本的に消滅時効期間を統一しました。
また,債権の消滅時効の基本を主観的起算点から5年としたので,商事消滅時効に関する商法522条の規定は削除されることとなりました。

第7 消滅時効

1 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点
旧民法第166条第1項及び第167条第1項の債権に関する規律を次のように改めました。

166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
   1 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
   2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
(解説)

改正民法は,債権の消滅時効の期間を「債権者が権利を行使することができることを知った時から」5年間としました。
債権者が「知ったとき」から起算するので,主観的起算点と呼びます。
すでに民法724条は,不法行為に基づく損害賠償請求権につき,「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」から時効期間が進行する旨を規定しており,それに関する多数の判例及び学説の蓄積があります(内田民法Ⅱ473〜476頁参照)。改正法は,このような判例・学説の蓄積があるので,主観的な起算点を設けても,裁判実務に耐えうると考えたのだと思います。
また,権利を行使することができる時から10年で債権は時効消滅します。客観的な起算点です。債権のうち,契約に基づくものは,その行使できることを知らないということは考え難いので,行使できるときから5年で消滅時効にかかるケースが多いと思われます。
その意味で,「商行為によって生じた債権」につき,5年間行使しないことによって時効消滅するとした商法522条の規定の意味がほとんど無くなり,削除されることとなったのです。
ちなみに,銀行の貸金債権の消滅時効期間は,商法522条の規定により5年でしたが,同様の金融業を営む信用組合の貸金債権の消滅時効期間は,貸付相手が非商人の場合(貸付相手が商人の場合は商法503条,同法3条1項により5年)は民法167条1項により10年でした(最高裁昭和48年10月5日判決)。しかし,その結論に合理性が認められないと批判されていたところです。

2 定期金債権等の消滅時効
(1) 定期金債権の消滅時効

旧民法第168条第1項前段の規律を次のように改める。

168条 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効よって消滅する。
   1 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
   2 前号に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。
(解説)

定期金債権とは,年金債権のように一定額の金銭などを定期的に給付させることを目的とする債権です。各期日の支払いを請求する債権を「支分権」といい,それを発生させる源の基本的な権利を「基本権」といいます(内田民法Ⅰ315頁)。
定期金債権については,旧民法168条と169条に規定がありました。そのうち,旧民法168条1項前段の規定に変更を加え,消滅時効の期間を,主観的な起算点から10年,客観的な起算点から20年としました。その結果,旧民法168条1項後段の「最後の弁済期から10年間行使しないときも時効消滅する。」旨の規定は削除しました。
また,旧民法169条の規定は,主観的な起算点を5年とする一般規定でまかなうこととし,同条は削除されることとなりました。