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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(12) 第17 多数当事者

3 破産手続の開始(民法第441条関係)
旧民法第441条を削除する。
(解説)

破産法104条1項により,本条は不要となったため,削除するものです。

4 連帯債務者間の求償関係
(1) 連帯債務者間の求償権(民法第442条第1項関係)
民法第442条の規律を次のように改める。

442条 連帯債務者の一人が弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは,その連帯債務者は,その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず,他の連帯債務者に対し,その免責を得るために支出した額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては,その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
   2 前項の規定による求償は,弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。(民法第442条第2項と同文)

(解説)

従前の規定においても,求償権が生じるのは,債務者の一人が自己の負担部分額を超えて弁済をした場合の超過部分額に限られるわけではなく,自己の負担部分額以下の額を弁済等した場合も求償権を生じると解釈されていました(大判大正6年5月3日)。
たとえば,1000万円の連帯債務を2名の連帯債務者が負担し,その負担部分が2分の1とされている場合,一人の連帯債務者が仮に300万円を弁済した場合でも,その半分である150万円を求償できるという解釈です。
すなわち,負担部分は額ではなく,割合であると解釈するものであり,改正法は,「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」と規定し,そのことを明確に規定しました。
なお,改正法の求償に関するルールは,法律の規定によって生じた連帯債務として,不真正連帯債務にも適用されるので(中田他著・講義債権法改正158頁),共同不法行為による不真正連帯債務に関し,負担部分を超える弁済をした場合にのみ,その超過部分を求償することができるとした判例(最判昭和63年7月1日)の立場は変更されることになります。

(2) 連帯債務者間の通知義務(民法第443条関係)

民法第443条の規律を次のように改める。

443条 他の連帯債務者があることを知りながら,連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において,他の連帯債務者は,債権者に対抗することができる事由を有していたときは,その負担部分について,その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において,相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは,その連帯債務者は,債権者に対し,相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
   2 弁済をし,そのた自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が,他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため,他の連帯債務者が善意で弁済その自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは,当該他の連帯債務者は,その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。

(解説)

1項については,連帯債務者の事前通知義務の規定を基本的に維持しましたが,次の点で従前の規定と異なっています。
一点目は,旧民法443条1項では,事前通知の対象を「債権者から履行の請求を受けたこと」としていましたが,改正法は,「共同の免責を得ること」としています。求償の関係では,事前に弁済等の共同免責をすることを通知すべきですから,このような規定となりました。
また,二点目として,通知義務は,他の連帯債務者があることを知っていたことを要件としています。他の連帯債務者の存在を知らないにもかかわらず,求償権が制限されるのは相当でない,との判断によるものです。
2項についても,連帯債務者の事後通知義務の規定を基本的に維持しましたが,1項の場合と同様に,通知義務は,他の連帯債務者があることを知っていたことを要件としています。
なお,事後通知を受けなかった連帯債務者が,自己の弁済等を有効とみなすことができるには,この者が事前通知をしなければならないかの問題については,判例は,事前通知を要する旨の判断をしています(最判昭和57年12月17日)が,この問題につき,改正法は,引き続き解釈に委ねています。

(3) 負担部分を有する連帯債務者が全て無資力者である場合の求償関係(民法第444条関係)

民法第444条の規律を次のように改める。

444条 連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは,その償還をすることができない部分は,求償者及び他の資力のある者の間で,各自の負担部分に応じて分割して負担する。(民法第444条本文と同文)
   2 前項に規定する場合において,求償者及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは,その償還をすることができない部分は,求償者及び他の資力のある者の間で,等しい割合で分割して負担する。
   3 前2項の規定にかかわらず,償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは,他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。

(解説)

1項は,民法444条本文と同じであり,3項は同条但書と同じです。
2項については,連帯債務において,負担部分を有する者が無資力になった債務者だけであった場合には,この者の求償面での負担は,残りの連帯債務者で平等に負担するというとする判例(大判大正3年10月13日)の立場を明文化したものです。

(4) 連帯の免除をした場合の債権者の負担(民法第445条関係)

民法第445条を削除する。
(解説)

旧民法445条は,債権者が連帯債務者の一人に対して連帯の免除をしたところ,他の連帯債務者の中に無資力者がいた場合に,債権者がそれを負担する旨の規定です。
しかし,無資力者がいた場合の負担を債権者に負わせることは,債権者の通常の意思に反すると思われますので,改正法は,この規定を削除しました。