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法改正のコーナー

民法(債権法)改正について

民法(債権法)改正について(14) 第19 債権譲渡 第20 有価証券 第21 債務引受 第22 契約上の地位の移転

第21 債務引受

1 併存的債務引受
(1) 併存的債務引受の要件・効果
併存的債務引受について,次のような規律を設ける。

470条 併存的債務引受の引受人は,債務者と連帯して,債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
   2 併存的債務引受は,債権者と引受人との契約によってすることができる。
   3 併存的債務引受は,債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において,併存的債務引受は,債権者が引受人に対して承諾をすることによって,その効力を生ずる。
   4 前項の規定によってする併存的債務引受は,第三者のためにする契約に関する規定に従う。

(解説)

債権譲渡が債権者の交代であるのに対し,債務者が交代する場合が債務引受です。債務引受については,旧民法には規定がなく,判例・学説によって理論的に認められてきたものです。
改正法は,その要件と効果を,併存的債務引受と免責的債務引受に分けて規定を新設しました。
併存的債務引受は,新しい債務者(引受人)がもとの債務者と並んで債務者となる場合であり,従来の判例は,元の債務者と債務引受をした債務者とは,連帯債務の関係になるとしていました(最判昭和41年12月20日)。
また,免責的債務引受は,債務が同一性を維持して新債務者に移転し,元の債務者が債権関係から離脱する場合をいいます。
併存的な債務引受については,保証契約と同様に,たとえ債務者の意思に反しても,債権者と引受人の間で成立します(2項)。
また,債務者と引受人との契約でも契約は可能ですが,債権者の承諾が必要です(3項)。その場合,第三者のためにする契約の方式によることになります(4項)。
債務者と引受人の関係は,連帯債務ですが(1項),改正法によれば,連帯債務の規定について相対効を原則にしていることに注意すべきです。

(2) 併存的債務引受の引受人の抗弁等
併存的債務引受の効果について,次のような規律を設けるものとする。

471条 引受人は,併存的債務引受により負担した自己の債務について,その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
   2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは,引受人は,これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において,債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(解説)

1項により,引受人は,引受の効力が発生したときに,債務者が有していた抗弁を債権者に対抗できます。
また,2項により,債務者が債権者に対して取消権や解除権を有する場合に,履行拒絶をすることができます。
相殺については,連帯債務に関する439条の規定により,履行拒絶権があります。

2 免責的債務引受の成立
(1) 債権者と引受人との契約による免責的債務引受
債権者と引受人との契約による免責的債務引受の成立について,次のような規律を設ける。

472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し,債務者は自己の債務を免れる。
   2 免責的債務引受は,債権者となる者との契約によってすることができる。この場合において,免責的債務引受は,債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に,その効力を生ずる。

(解説)

1項は,免責的債務引受契約の効力に付いて規定し,2項は,引受人と債権者との契約によって免責的な債務引受をすることができるが,債権者が債務者に対してその契約が成立したことを通知することによってその効力が生じることを規定しています。

(2) 債務者と引受人との契約による免責的債務引受
債務者と引受人との契約による免責的債務引受の成立について,次のような規律を設ける。

472条第3項 免責的債務引受は,債務者と引受人となる者が契約をし,債権者が引受人となる者に対して承諾することによってもすることができる。

(解説)

免責的な債務引受は,引受人と債務者の間で契約し,債権者が引受人に対して承諾した場合にもすることができることを規定しています

3 免責的債務引受による引受けの効果
免責的債務引受による引受けの効果について,次のような規律を設ける。

472条の2 引受人は,免責的債務引受により負担した自己の債務について,その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
     2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは,引受人は,免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務の履行を免れることができた限度において,債権者に対して債務の履行を拒むことができる。


472条の3  免責的債務引受の引受人は,債務者に対して求償権を取得しない。

(解説)

免責的債務引受の効果を規定したものです。
472条の2第1項は,債務者が主張できる抗弁を対抗できる場合を規定したものです。抗弁には,債務者の有する相殺権は含まれないもの解釈されます。
同条第2項は,債務者が取消権や解除権を有する場合に,引受人に履行拒絶権を認めたものです。
472条の3は,引受人が自ら債務を履行しても,旧債務者に求償できないと規定しています。免責的債務引受が,他人の債務を自己の債務とするものですから,引受人と債務者の間に,求償関係を発生させる基礎がないからです。ただ,引受人と債務者の合意によって引き受けた場合などは,その合意に基づき,債務者の委託に基づいて引き受けた場合には,委任事務処理費用の請求として請求できる場合があるのは,別論です。

4 免責的債務引受による担保権等の移転
免責的債務引受による担保権等の移転について,次のような規律を設ける。

472条の4  債権者は,第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし,引受人以外の者が担保を設定した場合には,その承諾を得なければならない。
     2 前項の規定による担保権の移転は,あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
     3 前2項の規定は,第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。
     4 前項の場合において,同項で準用する第1項の承諾は,書面でしなければ,その効力を生じない。
     5 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは,その承諾は,書面によってされたものとみなして,同項の規定を適用する。

(解説)

免責的債務引受につき,引受人以外が設定した担保については,債務者が提供した場合を含めて,設定者の承諾が必要です。
反対に,引受人が設定した担保については,別途の引受人の承諾は不要です。
同じように,保証債務を存続させるには,保証人の書面(電磁的記録を含みます。)による承諾が必要です。

第22 契約上の地位の移転

契約上の地位の移転について,次のような規律を設ける。

539条の2 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において,その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは,契約上の地位は,その第三者に移転する。

(解説)

契約上の地位の移転に関し,明文で認められました。
また,賃貸人の地位の譲渡の特則を,賃貸借の項で規定しました(605条の2参照)。

以上